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ミネラル栄養学との出会い

1.ミネラル栄養学との出会い
私の会社は病院に薬を納めるジェネリック医薬品専門商社です。

会社を始めて38年になりますが20数年前よりお薬を飲まれている患者さんのある変化に気が付き始めました。それは、以前はよく効いていたお薬が効かなくなった、昔は副作用など出なかったのに多くの副作用が出るようになるなどの症状です。

それ以外にも今でいう生活習慣病の患者さんの年々増加、あるいは若年化が進んでいることでした。この事は色々な要因があると思いますが、私はこの症状の一番の要因は人々の食生活の変化からくる体質の変化ではないかと考えました。

社会情勢や生活環境、食生活などの外的な変化に人々の体質が変質させられているのではないかということです。この体質の変化で顕著なものが微量元素の不足によるものと腸内環境の悪化によるものだと気づきました。

私がミネラルに興味を持ち始めたのは1983年得意先のドクターに進められ富士経済より取寄せました、特別研究レポート・ミネラルに関する栄養学、(渡辺正雄著)に出会ってからです。

著者の渡辺正雄先生には、その後綜合医学会の活動する中で色々とご指導いただきました。当時は食べ物や栄養に関する微量元素の文献も少なく渡辺先生の翻訳物が参考になりました。

もう一方私の尊敬する中嶋常允先生との出会いも大きく影響致しました。先生は健全な元気な農作物は土壌のミネラルバランスが整っていること、土の中で微生物が健全に活躍する環境を整えることを指導なされながら健康な農作物の生産指導に紛争されながら人々の健康への道を説いておられます。

一方 アメリカでは生活習慣病の急増に対して1977年に、世界的な権威者を集めて徹底した調査が行われました。そのレポートが「アメリカ上院栄養問題特別委員会レポート」として有名な、いわゆる「マクガバン(M委)レポート」です。

その内容の要旨は、アメリカでは生活習慣病がそれ以前の20年間に激増し、そのままの事態が進めば、医療費の増加で国家経済にも甚大な影響を及ぼしかねないというものでした。このレポートは結論として次のように指摘していました。

1. ガン、心臓病、脳卒中など、6大死因となっている生活習慣病の原因の一つは、現代の間違った食生活にあり、自然とバランスの双方が欠けた食品を過剰に摂取していることによるものである。理想的な食事はかっての日本食だと指摘したのでした。

2. 現代の医学は薬や手術に偏りすぎていて、栄養的な視点が欠如している、食生活のあり方を改善し、病気の予防にもっと積極的に取り組む必要がある。

マクバガンレポートの内容は、当時のアメリカ国民にとってたいへんショッキングなものでしたが、こうしたことがきっかけとなってアメリカで代替医療が注目されるようになってきました。

それからすでに30年近くがたちます、日本は今からです。成人病を生活習慣病と改めた日本の政府は、2000年に健康日本フォーラム21を発足させました。
また、2005年食育基本法を決め具体的に動き出しました。
その背景には、加工食品の増加、化学肥料を多用する農業、環境汚染、ストレスの増加などが日本人の健康を害する大きな要因になっているという認識があります。食生活や環境の改善によって病気を未然に防ぐという一次予防の重要性が理解されるようになってきました。

マクバガンレポートで指摘した理想的な、かっての日本食に使われた食材や食文化は遠い昔の事なのでしょうか、今その本質を取り戻し健康な家庭と社会を取り戻せると信じます。

私は20年前より健康食品の提供に携わる者としてのこだわりがあります。

1命の根っこを強くする補助食品の提供と生活提案

腸内環境の整備すなわち植物も土中の微生物に養分分解をしてもらいながら自らの栄養を吸収しながら成長します。善玉微生物が活躍できる土すなわちミネラル・微量元素の構成と水分を含め他の養分が命を支えてくれます。

人々が健康維持に欠かせない大地の養分に抱かれ、小さな微生物の力を借りながら植物も動物たちも子孫繁栄の命の伝承が行われています。自然の営みに学び、健康回復の生命力を最大限引き出すこと、すなわち自然治癒力をたかめる効果を追求しています。

箕浦 将昭
2.ミネラルは酵素に関与
人間の体には必要不可欠な栄養素が五種あり(五大栄養素)、そのうち一つがミネラルと呼ばれる無機質です。体内では合成されませんので食事から摂取する必要があります。

ミネラルの機能は生体内での酸化・還元反応を触媒する酵素や補酵素の構成成分として、その活性中心に存在するもの、また酵素や補酵素の構成成分ではないけれども、それらが正常な作用を営むように側面から働きかける、潤滑油のようなものなどがあります。
従ってミネラルはエネルギー源にはなりません。生体が健やかに生きていく上で、無くてはならないものが必須栄養素です。必須であるものが不足すると代謝不全などを招き、消化、吸収、排泄系器官に障害があらわれ、病気になります。

しかし、必須栄養素であっても、摂りすぎると有害になるものもありますので注意しなければなりません。生体は多種類の元素から成り立っています。常量元素または多量元素と言われる比較的量の多いものと、微量元素と言われる量の少ないものに分けられます。

現在、人間にとって必須とされている元素は11種類の常量元素(酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リン、イオウ、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウム)と9種の微量元素(鉄、セレン、ヨウ素、モリブデン、クロム、コバルト等)の20種です。この他に動物で必須と認められている元素が6種あり、この中には人間にとっても必須である可能性が示唆されているものもあります。

最近、ミネラル不足が指摘されますが、その原因は複雑です。摂取量の絶対量は充分でも何かの要因で吸収が阻害されているのか、大きく二通りが考えられます。例えば、人の亜鉛欠乏症は1962年に地中海沿岸で発見されました。

いわゆる小人症です。地域住民の食生活調査からは亜鉛の摂取量不足はなかったのですが、結局、主食である小麦中のフィチン酸が亜鉛とキレート化合物を形成し、亜鉛は吸収されず、素通りして排泄されてしまっていたのです。このように食べ物の中に共存するものが、栄養素の吸収に大きく影響します。

亜鉛欠乏症に関しては、日大名誉教授の宮田寛先生の発表によると、最近、味覚外来受診者が増加傾向にあり、亜鉛投与で約六割が改善するとされています。原因は刺激性の強い味付け、薬の副作用、加工食品中の保存料、防腐剤などがミネラルの吸収抑制に繁がっていると考えられます。

食品添加物として許可されているものの中にはクエン酸、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウムのように、金属元素とキレー卜化合物を作るものがかなりあります。日本人の栄養所容量の中の無機質所容量は成人一日当たりカルシウム0.6g、鉄12mg(男性10mg)とされています。

その他、目標摂取量として食塩10g以下、リン0.6g、カリウム4g、マグネシウム0.3g、所容量も目標摂取量も示されていませんが亜鉛10mg、銅2mg、ヨウ素0.1mg以上が適当量と考えられています。

アメリカ合衆国の無機質所容量はカルシウム、リン、マグネシウム、鉄、ヨウ素、フッ素、亜鉛、銅、クロム、マンガン、セレン、モリブデンと多種類の元素について定められています。国土が広いので、食品の産地による違いが大きいこともあるからでしょう。必須ミネラルの中でマグネシウムとカリウムが突然死と関係があることが解りました。

ここ5年間タイとの共同で続けてきた研究結果から解ってきたことです。タイ東北部は岩塩地帯で農業は適さず、これといった産業もありません。若い男性はシンガポール、サウジアラビア、ブルネイ、台湾などに出稼ぎに行きます。そして出稼ぎ先で突然。死を起こす例が多いのです。在シンガポール・タイ大使館には年間60~80人のタイ人労働者が就寝中に死亡したというデータがあります。その人達の出身地は約9割が東北タイです。

この地方では国内でも突然死はあり、外国で起きるより頻度は低いのですが、犠牲者は全て男性です。その原因究明の一環として、食習慣、食事、水、土壌などの環境試料、地域住民の血液と尿などを分析し、マグネシウムとカリウムの欠乏を疑いました。そこで、帰国後、マウスに低マグネシウム・低カリウムの食餌を与えたところ、雄ネズミは一週間で全部死亡してしまいましたが、雌ネズミは全て生存という結果を得ました。

そこで、雄雌共に性器を手術で摘出し、前記と同様の餌を与えたところ、性差はありませんでした。従って、女性ホルモンが突然死抑制に関与している可能性があります。日本をはじめ、多くの国の平均寿命は男性より女性が長命ですが、ひょっとすると同じ理由によるのかもしれません。国外で突然死が多い理由はストレス、過労が関係していると思われます。

過労死と突然死は共通部分があります。マグネシウムの関与もその一つです。マグネシウムはビタミンB群とともに糖質、蛋白質の代謝を促進し、心臓の筋肉の働きを良くし、血圧や体温を調節する働きもあります。不足すると倦怠感、不整脈、けいれん、記憶障害、いらいら、狭心症などを起こしやすくなります。

慢性化する高血圧症、糖尿病、虚血性心疾患、脳血管障害などを誘発しかねません。必須微量元素であるミネラルの欠乏は生殖能にも関係します。亜鉛は前立線に多く存在し、精子の運動能と関係があることが知られています。また、精子数とセレン濃度は正相関し、セレンは造精能と関係します。セレンは免疫能を高め、発ガン抑制効果があるといわれます。

その理由は国単位でみて血清セレン濃度の高い日本、タイ、台湾、フィリピンなどでは乳ガン死亡率が低く、血清セレン濃度の低いニュージーランド、イギリス、アイルランドなどでは乳ガン死亡率が高いことからです。セレンは肉、魚介類、茸類、大豆、野菜ではにんにく、玉ねぎに多く含有されています。また、日本は比較的セレンの高い土壌です。普通に生活している日本人にはセレン欠乏症はありません。

生命の営みには何百種類の酵素が関与していますが、そのうちの約200は亜鉛酵素であることが知られています。生体内で生じる活性酵素の消去に関与する酵素、スーパーオキジディスムターゼは生活習慣の予防、老化防止の観点からも重要視されています。この酵素は亜鉛、銅、マンガンを含有しています。このようにミネラルは微量であっても健康の保持には欠かせない重要なものです。

平成10年5月21日(木曜日) 健康産業新聞 掲載記事より
順天堂大学・千葉百子助教授談