1.ケイ素の働き
人体の組織と組織をつなげる役目があるコラーゲンを強くする元素。骨の形成の初期段階で、カルシウムのコラーゲン沈着を助け、骨を強くします。
ケイ素が減少すると、骨や爪がもろくなるのはもちろん、最近では血管に脂肪がつきやすくなるとの研究も発表されました。動脈硬化が進行した人の動脈には、健康な人の数パーセントしかケイ素が含まれていないという報告もあります。
ケイ素欠乏の場合の症状や兆候として、爪が割れやすい、髪が抜けやすい、動脈硬化の進行、皮膚がたるむなどがあります。
2.しなやかな血管のために
ケイ素の必須栄養素としての役割、ケイ素(Si)が必須栄養素である実証は、広くニワトリとネズミで実証されています。
ケイ素は酵素と共に生物界に最も多く存在する元素の一つです。
体内には18g程度とかなり多い保有量が検出され、皮膚に最も多く分布し、爪・毛・髪・そして骨にも比較的多く分布しています。
骨の成長維持にはケイ素が必要ですが、加齢とともに皮膚の中のケイ素含有量は減っていきます。特にアテローム型の動脈硬化症の人の動脈ではケイ素の含有量が激減することが判明しています。
これらの事は血管組織を強くしている酵素にケイ素がかかわっている事を意味しています。
ケイ素の不足は、動脈硬化の促進、爪の割れ、皮膚のたるみ、脱毛、またガンに対する抵抗力の低下など色々な症状をきたします。
ケイ素の補給は組織の結合組織中のコラーゲンを増強し、動脈硬化を防止し抗ガン力を強化します。
ヒトではアテロ-ム型動脈硬化症は難治ですが、サルでは食餌矯正でよく治癒する事実が確かめられています。
現代の食生活では精白穀類の主食「白米、精白パン」や加工食品の利用が多く、ケイ素の摂取は非常に少なく、自然食品への復帰で完全栄養を期すことの重要性を示す多くの根拠があり、ケイ素の確保もその一環となっています。
アルファルファを原料とする元祖元素は100g中1000mgと豊富でケイ素の補給に最適です。
ケイ素が特に大切なのはムコ多糖類と結び付いていることで、例えば馬の鼻骨のムコ多糖類を分離精製してみると、Siは化学的に強固に結合して87ppmも含んでいます。
特にコンドロイチン硫酸Aの中に多く含まれ、動脈の保護のためにも無視できません。また骨、軟骨、結締組織以外にも、Siはムコ多糖類の存在する限りは必要で、胎児の成長、傷の治癒動脈硬化症や骨肉節炎の治療、あらゆる老化性の退行性疾患にも有効です。どの老化現象にも、ムコ多糖類の著しい減少が伴っています。
皮膚、胸腺なども加齢とともにSi含有量が低下し、またヒトの動脈のSi含有量も加齢に伴って漸減し、特に「アテローム型の動脈硬化症」では激減すると報告されています。一般にホルモンの活動が低下すると、Siの吸収率も代謝回転も衰えていくようです。
阿部英雄発行 渡辺正雄著より
3.アテローム動脈硬化とは
アテローム動脈硬化(粥状[じゅくじょう]硬化)とは、脂肪性物質のまだらな沈着物(アテローム、あるいはアテローム硬化斑[プラーク])が、中動脈や大動脈の内壁で大きくなるため、血流が減少したり、遮断されたりする病気です。
ほとんどの欧米諸国で、アテローム動脈硬化は主要な病因および死因です。米国だけでも1996年のアテローム動脈硬化による死亡者数は100万人近くと、癌(がん)による死亡の2倍、事故による死亡の10倍を占めています。
医学の著しい進歩にもかかわらず、冠動脈疾患(心臓に血液を供給する冠動脈に生じるアテローム) 動脈硬化 (冠動脈疾患による心臓発作)と、脳卒中(脳へ続く動脈に生じるアテローム動脈硬化は、ほかのすべての原因を合わせたよりも多数の死亡の原因となっています。
アテローム動脈硬化は、脳、心臓、腎臓、その他の命にかかわる臓器や脚の中動脈や大動脈に損傷を与えます。アテローム動脈硬化は、動脈壁が肥厚して弾力性がなくなる病態の総称である動脈硬化の中で、最も重大で、最も多くみられる種類です。
4.予防と治療
アテローム動脈硬化を予防するためには、喫煙、コレステロール高値、高血圧、肥満、運動不足などの、改善できる危険因子を認識する必要があります。
食生活の改善やケイ素を多く含む食品サプリメントの利用のどで予防することができます。
5.ケイ素はカルシウムより骨を強くする
「フラミンガム研究」が解明 2004.4.16
米国の代表的な疫学研究の一つ「フラミンガム研究」(1940年代からスタート)によると、このフラミンガム研究に当初参加した人の子供を対象に「フラミンガム子孫研究」(1970年代からスタート)のデータによる。同研究グループは、フラミンガム子孫研究の参加者2846人(30~87歳、男性1251人、女性1596人)の食生活を調査。
同時に、背骨(腰椎)や足の付け根の骨(大腿骨けい部)の骨密度を測り、食事からのケイ素摂取量と骨密度との関連を調べた。
ケイ素摂取量を4グループに分けて比較すると、男性や閉経前の女性では、ケイ素摂取量が多いほど大腿骨頚部の骨密度が高いことが判明した。
最もケイ素摂取量が多いグループ(1日40mg以上)は、最も摂取量が少ないグループ(1日14mg未満)より、骨密度が10%近く高いことが明らかになった。
「食事からのケイ素摂取量の差が骨密度に及ぼす影響は、カルシウムよりも大きい」と研究グループはみている。
ケイ素はこれまで、人の健康に対する影響がはっきりとはわかっていなかった。ケイ素を含まない食事で育てたマウスは、骨の生育が不十分とのデータがあり、おそらく骨の健康維持に大切なミネラルだろうと考えられていたが、人を対象にした大規模な疫学研究で密接な関係が示されたのは初めて。
これまで人への作用に対するデータがなかったこともあり、今のところケイ素の栄養所要量は定められていない。ケイ素はほかのミネラルと同様に、食品から摂取しても体内に吸収されにくいことがわかっている。
例えば、バナナはケイ素が豊富な食品の一つだが、食べても含まれるケイ素の5%程度しか体内に取り込まれない。
ただし、ケイ素の吸収率は食品の種類や加工法によって大きく変わる。
ケイ素は穀物の皮にも多く含まれているが、全粒粉から作ったシリアルや、大麦を皮ごと使って作るビールの場合、含まれるケイ素の4~8割と高い割合で吸収される。
ケイ素と骨密度との関連を示したフラミンガム子孫研究の論文タイトルは、「Dietary Silicon Intake Is Positively Associated With Bone Mineral Density in Men and Premenopausal Women of the Framingham Offspring Cohort」
6.ケイ素を多く含む食品
玄米 あわ アルファルファ スギナ
ホタテ ホヤ サザエ 豆類、 レバー
ほうれん草 にんじん