納豆菌を研究している学者は何人かいますが、納豆菌を専門に、継続的に、研究している現役の学者となるとさほど多くはありません。「納豆菌を飲んだ時の医学効果の研究」となると、実に限られてきます。それと言うのも、納豆菌は純粋培養がとても面倒だからです。研究には、安定した一定品質の納豆菌の培養が欠かせないのですが、納豆菌そのものの医学的な働きについての研究でいちばん有名なのが、昭和42年、金沢大学の亀田幸雄博士によって行なわれた制ガン効果の実験でしょうか。
亀田博士は、次のような実験をしました。「両足の付け根にガン細胞を移植したハツカネズミの片方の足にだけ、納豆菌を注入してその後のガンの発達を観察したところ、納豆菌を注入しなかった足にはガンが発生していたが、注入したほうにはガンはなく、あったとしても半分以下の確率だった。」このことが新聞に発表されて大きな話題となりましたが、納豆菌がどんなメカニズムでガンを抑えるかについては不明な部分がありますが、ガンの抑制効果があることは間違いないようです。
又、横浜市立大学医学部細菌学教室(主任:田所一郎教授)らによって行われたいわゆる納豆菌の免疫調節能と題する論文で以下の報告もある。
使用菌株:ナットウ菌BN株は目黒研究所より分与を受けた。
BN菌体非投与群では細胞移入後5~6日頃より腹部が膨隆しはじめ、12~16日間で全マウス17匹が死亡した。これに反しBN菌体投与群では15~16日頃より腹部が膨隆するマウスも観察され、21~28日にかけて6匹のマウスが死亡したが、11匹は観察終了35日までMM102細胞が生着することなく生存した(図1)。
図1 BN菌体の腫瘍増殖抑制効果
腫瘍細胞移入後の日数(日)
腫瘍細胞のみの・・・腫瘍細胞十BM菌体接種したマウスのそれぞれの生存曲線を示す。